「照射食品ってなに?シリーズ・照射食品学習会」を開催しました

照射食品とは、殺菌、殺虫、芽止めなどのために、放射線を当てた食品のことです。日本では、じゃがいもの芽止めの目的のみに認められていますが、それ以外では、輸入、販売ともに禁止されております。また、一般的にあまり知られていませんし、安全性についての科学的で正確な情報や、海外で食品照射が役立っている例について、気軽に学べるような機会に乏しく、是非については賛否両論あります。(パルシステムでは照射じゃがいもの取り扱いはなく、昨年、群馬以外のパルシステムの会員生協では、反対の署名運動を行っています)

昨年9月に「照射食品って知っていますか」というアンケートを実施したところ、100名以上の組合員のみなさまから回答をいただきました。予想外の反響の大きさに驚くとともに、照射食品について学習会をやってほしい、と言う声もいただきました。

そこで運動テーマグループでは、シリーズで学習会を計画し、第1回目は反対の立場をとるパルシステム連合会の商品部の職員による学習会、第2回目は、原研高崎研にて、食品照射の専門家を講師に学習会と照射実験、そして、3回目として、二つの学習会の参加者の意見交換会を開催。参加者には、賛否両方の意見を聞いていただくために、第1回と第2回の両方に必ず参加していただきました。

第1回 照射食品ってなに?どういう問題があるの?(9月28日)

9/28 第一回学習会の様子

参加者16名(組合員8名、役職員8名)
パルシステム連合会商品部の原英二さんが講師となり、照射食品とは何か、照射食品の用途と主要国の食品照射の状況、今なぜ日本で照射食品の拡大か、国内外での照射食品をめぐる主な動き、照射食品反対の理由を説明。放射線そのものよりも、照射したときにできる分解生成物や活性酸素の人体への影響が心配される、とのことでした。

以下、主な反対の理由
(1)日本において本当に必要なのかどうか。たとえば、香辛料については、現行の蒸気殺菌処理で香気成分が若干失われるが、それで充分ではないか、消費者は不自由を感じていない。
(2)安全性について 照射したときだけに生成するアルキルシクロブタノンについて、発がん促進作用があるという実験データがあるにもかかわらず、十分な安全性を示すデータが不足している。また、アルキルシクロブタノンだけではなく、何ができているのかわからない状態で、何ができているのかを見つけるのは、難しい。
(3)WHOは10kGy(キログレイ)以下の照射食品に毒性はない、と1980年に報告しているが、FDA(アメリカ食品医薬品局)寄りの意見なので、その評価は妥当かどうか疑問がある。
(4)表示義務はあるが、小分けすると表示しないことが多く、加工食品にいたっては表示の義務がない。

過去に日本で、カナダからの輸入されたサーモンに照射臭がしたために照射食品と疑われ、改めて検査したところで照射食品であることが発覚した。そのため、輸入を阻止した事件の話を、講師の原さんが紹介。その話を受けて、参加者から「原研で照射実験ができるなら、スモークサーモンを照射してみたい」との意見が出ました。

第2回 原研見学会(9月30日)

9/30 原研高崎研にて学習会の様子


ガンマ線を出すコバルト60線源は、照射室の床下に続くこのプールの水深6mのところに格納されています。説明をしているのは、講師の小林泰彦さん

参加者15名(組合員7名、役職員8名)

<放射線とは何かから学習しました。照射施設の見学と試食も>

パルシステム群馬として原研高崎研の見学会に行くのは、これで3回目。今回も講師は小林泰彦さんが務めました。また、1月の合同学習会でも一緒だった、円卓会議のメンバー(代表の市川さん、飯塚さん)、北海道教育大学の鵜飼さんも参加しました。

前半は、照射食品についての講義で、放射線とは何か、食品への放射線の利用、海外での照射食品、照射食品の安全性についての話がありました。小林さんは、「『推進派』と呼ばないで!」と、あらかじめ強調。

「世界の中で、日本だけその技術の恩恵を受けられないのは理不尽、頭ごなしに禁止するのではなく、どう活用できるかを行政は真剣に検討して、食の安全に役立てて欲しいと思うけれど、照射食品のセールスじゃないから食べたくない人はどうぞご自由に。宗教の勧誘じゃないから私の説明を信じてくれなくても結構。でも、科学的に間違った意見やウソを鵜呑みにして無用の不安を募らせている人は気の毒だから、本当のことが知りたい人にはとことんていねいに説明しますよ」。(小林さん)

(放射線とは何か、放射能との違い、食品照射の原理、照射食品のメリット・デメリットなどについては、前回の学習会「『照射食品の学習会』を開催しました」で紹介しています。よろしければご参照ください。)

日本ではジャガイモの芽止めの目的で使用が許可されていて、実際に行っているのは北海道の士幌農協だけです。今年4月の高崎研の一般公開で、来場者にお土産として配った士幌農協の芽止めジャガイモの、大きく「芽どめじゃが」と書かれたダンボール箱を見せてもらいました。小売の際は、照射したことを示すシール(同梱されている)を貼って販売されます。市場に出るのは、ジャガイモの端境期だけあり、さらに大手のスーパーや生協では取り扱っていないため、目に触れる機会は多くありません。

第1回目の学習会で、安全性について疑問視されていたアルキルシクロブタノンについては、新たに2006年と、2010年の実験データを元にした説明がありました。WHOが安全だと出した結論を否定するような実験の結果は、これまで何一つ出ていないという話でした。※

※詳しくは、日本食品照射研究協議会のHPに、照射食品やアルキルシクロブタノンに関する安全性に対する評価の情報や文献のリストを参照ください。
日本食品照射研究協議会HP内関連情報ページ

照射施設へ移動し、1m以上ある分厚いコンクリートの扉の中に入って感じた、一種独特のにおい。そのにおいはオゾンの臭いだそうです。放射線を出す物質はコバルト60で、普段は深さ6mのプールの底にありますが、照射するときには引き上げて使用。照射する前に、水中に沈んでいるコバルト60線源を見ることができました。

照射室内を暗くすると、これぞコバルトブルーと呼ぶべき、幻想的な薄く青い光を出している様子も観察。(チェレンコフ光というそうです)コバルト60はカナダの原子炉で製造され、日本に運ばれてくるそうで、その際、外部に放射線がもれないよう、大きな鉄の容器に入れて輸送されます。施設内には、放射線を遮るための鉛のブロックも置いてあり、試しに持ってみたところ、「うわっ!重い!」と思わず声を上げてしまいました。レンガくらいの大きさでも、10sもありました。

今回は、施設の見学だけでなく、照射実験と試食も実施。実験する品目は、運動テーマグループの会合で要望があったバナナと、前々日の学習会で「照射臭がする」と話題の上がったスモークサーモンです。また、円卓会議の方が用意してくれたぶどうやエビ、ドライフルーツも一緒に照射しました。

バナナ 右側が照射したもの


スモークサーモン 左側が照射したもの


照射室に並べられた実験用のバナナ・ぶどう・スモークサーモンなど。奥に見える金網の中からコバルト60のガンマ線が照射されます。


<照射臭ってどんな臭い?照射すると味が変わる?>

バナナ、ぶどう、スモークサーモンの3つを、照射したものと照射していないものを紙皿にのせ、どちらが照射したかわからない状態で、見た目や香り、味、硬さなどの項目をチェックしながら試食しました。試食参加者は19名。(パルシステム群馬14名、円卓会議のメンバー、原研の職員など5名)

【バナナ】・・・パルシステムのバランゴンバナナ 検疫殺虫線量の最大値として500Gyで照射
【ぶどう】・・・首都圏のデパートで購入 品種:ロザリオビアンコ 検疫殺虫線量の最大値として500Gyで照射
【スモークサーモン】・・・高崎市内の鮮魚店で購入 チリ産トラウトサーモン 食中毒予防線量2kGyで照射

まずは、バナナ。皮の色は、ほとんど変わりがありませんでした。香り、味、風味、硬さについても、違いがわかりにくく、照射も非照射も同じと答えた人が多い結果でした。しかし、人によっては、照射した方が、香りがより甘く感じたり、照射していないほうが風味がいいと感じた人もおり、意見はまちまちでした。

次にぶどう。色や見た目は、ほとんど変わりがありませんでした。照射したほうが柔らかく、皮がむきやすい、といった傾向がありましたが、答えに大きくばらつきがあり、照射品と非照射品のどちらがいいかという質問では、どちらも十分よいという意見が半数、残りの半数は、照射と非照射どちらも同数でした。

スモークサーモンは、先のぶどうやバナナに比べると、照射したものと照射していないものには、明らかな差がありました。照射したものは、色は明らかに薄くなり、香りが飛び、塩気が強くなり、味も変化したと感じる人が多くいました。

初めて照射したものを食べる参加者の中には、午前中の学習の内容を受けて、「安全と聞いたから食べられた」と言った人もいれば、「やっぱり食べたくない」と、口をつけなかったり、残したり、食べても口から出したりした人もいました。

第3回 意見交換会(10月14日)

参加者10名(組合員3名 役職員7名)

<参加者同士で感じたことを自由におしゃべりしました。>

参加者は、お茶やお菓子を食べながら、自己紹介と、学習会に参加した動機や2回の学習会を受けての感想、照射食品に対する考えなどを、自由に話してもらいました。

また、照射実験の結果発表と、実験結果についての専門家からのコメントを発表。それによると、第1回目の学習会のときに話題に出た、スモークサーモンの照射臭は、正常で適切な照射処理の結果ではなく、何かの理由で不適切に過剰な高線量が照射されたか、あるいは照射後の保管状態などが悪くて、品質が劣化したものであろう、ということでした。

参加者からは、
・賛成反対の両方の意見を聞けるチャンスだと思って学習会に参加した。
・一回聞いただけでは理解できない、難しい、もっと学習が必要。
・食品に照射する必要があるのか。
・なぜサーモンに照射する必要があるのか?じゃがいもを一年中食べなきゃいけないのか?
・照射が医療に使われ役に立つのはわかるが、食品に使うのはどうなのか。
・照射食品は、いかにもよくないというイメージがある。実験の試食も全部食べられなかった。
・表示がきちんとされることが大切。
・輸入食品で、それが照射しているのかどうかを実験してみたい。
・照射食品についてあまりに情報が少なすぎて、知ろうとしないと、知ることができないのが問題だ。
・(国の原子力政策について)平和利用を全面に出しているが、CO2削減も森林ではなく、オール電化の推進など、原発の方へシフトさせようとする政治的な力を感じる。

など、予定した2時間では語りつくせないほど、参加者のみなさんからはたくさんの意見が出て、大いに盛り上がりました。

パルシステム群馬では、3回の学習会を受け、照射食品について、これからも組合員のみなさんに情報公開をし、学習の機会を提供したいと考えております。