「照射食品の学習会」を開催しました

11月27日(金)、運動テーマグループの組合員と役職員6名で、照射食品の現状や放射線についての正しい知識を得るための活動の一環として、高崎市の群馬の森の近くにある、日本原子力開発機構、高崎量子応用研究所(以下高崎研と略します)に行ってきました。講師は高崎研で研究をされている小林泰彦氏。以下、学習してきたことを報告します。

放射線って?放射能って?

放射線といえば、何を想像しますか?

・怖い、レントゲン、放射能汚染、原爆、原発…
・そういえば、学校でも習っていないような…

イメージではなく、放射線とは何かを正確に説明できますか? そこで、今回の学習会では照射食品や、放射線の基礎知識をしっかりと教えてもらうことになりました。
放射線とは、電球にスイッチを入れると光がでるように、放射性物質(ウランやコバルト、カリウムなど)から出るエネルギーのことです。放射線を出す能力を放射能といいます。「光と同じで放射線は残らないんですよ」という先生の言葉に???レントゲンを受けたからといって、放射線が体内に残ることはないのです。
それから、放射線って原発やレントゲン室にしかないと思っていませんでしたか?驚くなかれ、放射線は自然の中にあるのです。土や海水の中にカリウムがあり、それを植物は栄養として取り込んでいます。ですから、じゃがいもやさつまいもから自然放射線がでています。土壌や、花崗岩のような岩石からも、海上にも、上空にも放射線がでています。

なぜ食品に放射線を当てるの?

放射線をあてることで、芽止めや殺菌、殺虫ができます。(食品照射)それは、標的にするDNAの損傷を一気に大量に起こして、細胞の分裂や増殖を止めるのです。日本では、医薬品や医療器具、化粧品、食品の包装などに、放射線による殺菌が行われています。

照射食品って日本にあるの?世界では?

日本でも北海道の士幌農協にだけ芽止めの目的でジャガイモの照射が認められていて、3月から5月までの出荷のみに照射されています。(年間出荷量の約10%から20%)平成17年を機に表示も徹底されていて、照射したことを示すシールが小袋に貼られています。

世界では、香辛料・乾燥野菜、にんにく、ジャガイモの芽止め、穀物や果実の殺虫、食肉、魚介類の殺菌、蜂蜜などに照射されていて、2005年の食品照射処理量の調査によると、中国、アメリカ、ウクライナの三国が圧倒的に多く、次いで、ブラジル、南アフリカ ベトナム…と続きます。新興著しいアジア地域で増えてきています。一方、EU諸国では減ってきています。

放射線をあてた食品って、安全なの?

照射食品のリスクや安全性に関する研究は、日本国内はもちろん世界中で行われています。1971年から1980年までに日本を含む24カ国で共同研究がされて、1980年には、FAO(国連食糧農業機関)WHO(世界保健機関)IAEA(国際原子力機関)により安全宣言がなされています。Codex国際食糧規格にも採択されました。食品照射は、科学的に充分に安全が検証された技術であり、WHO(世界保健機関)によって安全性と栄養適正を認められています。

食品照射のメリットは?

・非加熱で殺菌
・殺虫が可能で、温度の変化が少ないので冷蔵、冷凍のまま処理できる
・残留毒性や環境汚染の心配がない
・発がん性物質のあるエチレンオキサイド(殺菌剤)やオゾン層破壊物質の臭化メチル(殺虫剤)の代替になる
・形状を問わず均一に殺菌でき、密封包装したあとにでも殺菌できるので、使用時に開封するまで清潔が保たれる

食品照射のデメリットは?

・コストが高い
・肉類や乳製品は照射すると異臭がする
・小麦粉に照射すると粘度が低下することがある
・消費者に誤解され、敬遠される恐れがある

照射施設見学

そして、講義だけではなく、照射施設の見学をしてきました。実際に研究中のところを、お邪魔させてもらいました。

照射室入り口。画像上部に使用中の表示があります。間違って人が中に入ったまま照射しないように、ドア左側にある鍵穴に鍵をするとドアが閉まり、照射します。放射線を照射した直後でも、放射線は残らないので入っても大丈夫です。この部屋は、2mの厚さのコンクリートの壁でできていて、放射線がもれないようにしてあります。



 照射施設の入り口にある線量計の貸し出しコーナー。線量計で被爆量を測ることができます。照射施設に入る際、必ず着用を義務付けられています。高崎研の研究員は各自線量計を携帯し、女性は1カ月に一度、男性は3カ月に一度、線量計で測った被爆量を届け出て、一生分のデータを管理しています。もちろん、研究中に被爆するようなことはほとんどありません。


学習会の最後に、9月に行われた照射食品に関するアンケートで寄せられた疑問の声についても質問してみました。
≪Q1≫照射食品に関わっている人達は自分や家族の体の心配はしないのだろうか?話を聞いてみたいと思う。
≪A1≫放射線管理区域は厳しく管理され、各自線量計のデータをとっています。作業中に被爆することもほとんどないようです。

≪Q2≫ほんのわずかでも毒性のあるものは避けてほしいです。ドイツでは食品に対する照射はどうなっているのか知りたいです。
≪A2≫EUはスパイスの照射を許可しています。ドイツは国内での照射は認めていないが、国外で照射されたスパイスの輸入はできるとのことです。

見学を終えて〜私たちは正しく理解していたのだろうか?〜

講義の様子

私たちは放射線について、正しく理解していないことが、よくわかりました。放射能と放射線を混同していて、放射線=放射能=被曝=怖い!!くらいの認識でした。

放射線や食品照射の原理、リスクと安全性について理解するのは、非常に難しい。わからない用語、初めて出てくる言葉が出てくると、そこで思考停止状態…。たった一度話をきいたくらいでは、充分に理解することができないとも感じました。

それでも、そんな私たちに対して、講師の小林氏は、専門的で難しいと思われることも丁寧にわかりやすく説明してくださり、「近いのだから、またいつでもいらっしゃい」と言ってくださいました。

原研の高崎研究所では、実際に食品を持ってきて照射する実験もできるそうです。次回訪れる際は、野菜や果物などを持っていき、実験してみたいと思います。

運動テーマグループでは、今後も照射食品の勉強会を原研高崎研究所にご協力いただいて行う予定です。次回は、たくさんの組合員の方に参加してもらおうと思っております。照射食品について、一緒に学び、考えていきましょう。


放射線、照射食品について、詳しく知りたい方は以下をご覧ください。
がってん食品照射 (社)原子力産業協会発行のパンフレット(PDF)
食品照射データベース
原子力研究開発機構 高崎研究所
放射線のはなし (財)環境科学研究所