「家庭の殺虫剤、子どもへの影響は?」の学習会を開催しました

去る4月22日(月)10〜12時、前橋市第四コミュニティセンターにて、家庭で使われる殺虫剤について参加者19名で学習会を行いました。講師は渋川サポーターくらぶメンバーでライターの米田玲子さんです。

私たちの住んでいる群馬県は、殺虫剤についてどんな環境にあるのでしょうか? 田んぼや畑が広がる地域で、農薬散布は少なくないのが実情です。群馬県ではかつて、無人ヘリコプターによる広範囲の空中散布が行われ、頭痛などの症状を訴える人が多数出てしまい、現在では自粛されています。しかし、農薬散布そのものが無くなったわけではありません。では、農薬散布する理由は何でしょう? 農作物に付く虫を駆除するためです。虫を殺してしまえば、農作物はきれいなままで収穫され消費者に届きます。でも、殺される虫たちと人間の神経系は同じです。

農薬など、数百万種類あるといわれる化学物質の危険性を、私たちは完全に理解していません。化学物質同士が重なり合った時の、影響を分かっていない部分があります。しかし近年まで、日本は世界一農薬を使用している国でした(単位面積あたり)。

2009年、日本で2億匹のミツバチが死にました。世界中でも、たくさんのミツバチが死にました。ほかの昆虫はもっと死んでいます。ミツバチの生態は人間にとってとても重要で、ミツバチの受粉により人類が食べている作物の40%が作られているといわれます。ミツバチが運ぶ花粉のたんぱく質はミツバチの幼虫の成育に必要で、春から活発に活動します。しかし、農薬の付いた花粉を運ぶことでミツバチと幼虫も死んでしまったと分かりました。養蜂家はリンゴ農家などと話し合い、花の時期が過ぎてから農薬散布するようになり、受粉から収穫まで安定するようになったようです。それまでは国に原因を聞いても分からないと言われ、民間機関に原因究明してもらい解決したという経緯があります。

ネオニコチノイドとは『ネオ=ニュー(新しい)』『ニコチノイド=ニコチンのような』という意味があります。米や野菜用の殺虫剤の成分として、イミダクロプリドなど7種類が認可され、このほかフィプロニルという殺虫成分も稲の育苗などによく使われます。これらの使用により、小さな生きもののいない田んぼができ、赤トンボなどが激減しています。これらの物質は、水に溶けやすく浸透しやすいのが特徴。その威力を例えるならば、有機リン系の農薬は爆弾、ネオニコチノイド系農薬は原爆といわれます。どちらも脳に作用する神経毒です。ヨーロッパ各国では使用禁止が広がり、イギリスやアメリカの学術雑誌「ネイチャー」「サイエンス」には、人への影響を科学的に示した論文が発表されています。

日本ではネオニコチノイドは有用なものとされ、「危険」という人は少ないのが実情です。しかし、子どもの知的障害などとの因果関係も指摘されています。異物を排除するという脳関門の発達していない乳幼児の近くで、ネオニコチノイド系薬剤が少量でも使われるのは心配です。大人でも新しい化学物質には弱いのです。

私たちの生活にあふれているネオニコチノイド系薬剤には、どんな物があるのでしょう。家の中では、住宅建材、シロアリ駆除剤、土壌処理剤に使われている場合があります。実際に手にして使いそうなものは、コバエ駆除剤、アリ退治薬剤、家庭菜園・ガーデニング用殺虫剤、ゴキブリ駆除剤、鉢植え用液肥、タンス用防虫剤などにもあります。可愛いペットのダニ・ノミ駆除剤にも使われています。

「防虫剤、殺虫剤などはむやみに使わない」「薬品を使って楽な生活をしようと思わない」「おばあちゃんの知恵を身に付ける」など、対策はたくさんありそうです。家を建てる時は、住宅建材や土壌処理剤に何が使われているか確かめる。庭に虫を見つけた時は、薬剤ではなくほかの方法で除去する。タンスには薬剤ではなく防虫効果のある自然素材の物を入れる。鉢植えには有機の肥料を与える、などなど。

私たちが口にしている野菜、果物にもたくさんの農薬が使われているとしたら心配です。パルシステムの商品は、どのように育てられ、農薬を使った場合、いつ、どのくらいの量を何回使ったのか、どんな名前の農薬なのかを知ることができます。コア・フード(有機栽培相当の栽培)なら、なお安心です。すべてを薬剤に頼らない生活は難しいと思いますが、身の回りから減らしていくことで今までより心配の少ない、安心な生活が送れるのではないでしょうか。

参加した皆さんから、さまざまなご意見をいただきました。

■殺虫剤は気分を悪くする程度と思っていましたが、幼児には影響が大きく子どものために使わないのが一番と思いました。

■殺虫剤を使っている家族に言い出しにくかったのですが、これを機会に伝えていきたい。

■ネオニコチノイド系農薬の影響が気になり参加しましたが、原則的に殺虫剤を使わないようにすることが大切ということがわかりました。

■虫と上手に付き合っていこうと思いました。

ほかにも「勉強になった」「理解して行動したい」「先人の知恵を学ぶべき」など、たくさんの声をいただきました。

講師の米田さん

スライドを使い、分かりやすくお話してくださいました。

真剣に聞き入る参加者の皆さん

質疑応答の時間、組合員さんの質問に丁寧に答えていただきました。

資料としてイラストやグラフなど、見やすく作られた冊子を用意しました。
「新農薬ネオニコチノイドが脅かす ミツバチ・生態系・人間」(発行:NPO法人 ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議)